スピリチュアル物語 第248話 一区切り

「こちらの世界での死はあちらの世界への誕生?」

ウィザットが驚いた顔で言うと

「輪廻転生はこちらの世界だけではなくあちらの世界にもあるんですか?」

マジョリアルが質問し、更に続けた。

「でもこちらの世界には肉体を持って生まれて来て、その時に過去世の記憶は失ってしまうけれど、あちらの世界に誕生する際には魂(Spirit)のみなので全ての記憶を持っていますよね?それに元々の魂の村に帰るわけだし、第一自分を産んでくれる母親なる存在も居ないわけなので、厳密な誕生とは言えないのでは?」

それを受けてマグワートは優しく微笑みながらこう言った。

「システムの違いじゃな」

「システム?」

「誕生とはこれこれこうだ、という概念の違いじゃよ。こちらの世界ではSpiritを肉体という容れ物に入れる必要があるので、必然的に母親という肉体からから生まれるというシステムが必要じゃが、あちらの世界への誕生は魂の村に回帰する形を指すので、こちらの世界での誕生という形態とは違う、という意味じゃよ。いずれにしてもこちらに誕生する時もあちらに回帰する時も、Spiritとしての一区切りを付けるという点に於いては同じじゃな」

「何故一区切りを付ける必要があるんですか?」

「空海が言ったとされる言葉…生生生生暗生始、死死死死冥死終(生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥(くら)し)じゃよ」

「え?何ですかそれは」

「人は何度も生まれ何度も死んでも、何故生まれるのか、何故死ぬのかを知らないという意味じゃ」

2025年10月10日号につづく❣

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