「忘れる意義?」ウィザットが眉を八の字にしながら反応するとマグワートが頷き、こう続けた。
「全ての記憶は今迄説明してきた様にゼロポイントフィールド=アカシックレコードに記録されてはいても“忘れる”という意識状態、つまり脳のそこから情報を取り出すというデバイスとしての機能が瞬時に働かない状態に陥ることによって、脳の性能保持と心身の健康維持が出来るという視点もあるんじゃよ」
「忘れることによって脳の性能保持と心身の健康維持が出来る?」
「脳がデバイスとして容量オーバーにならない様に脳自らが忘れるというスイッチを押しているんじゃ。そうすることによって今というこの時に必要な記憶を効率よく迅速に取り出すことが出来るし、嫌な記憶を忘れていくことによって精神的及び肉体的健康も保たれるんじゃ」
「つまり…脳がパンクしてしまうと肝心な今必要な記憶を取り出すのに時間が掛かってしまうし、嫌な記憶をいつまでも鮮明に憶えていたら精神が持たなくなるので、脳には忘れるという機能があるっていうことですね?」
マジョリアルの言葉にマグワートは再び頷き、こう言った。
「その通りじゃ。脳は記憶の優先順位を保ち精神崩壊を防ぐ為に“忘れる”という意識状態を自ら作り出しているんじゃよ。更には全ての記憶に縛られていると思考の自由度も下がってしまい、今の状況にフレキシブルに対応する為の余裕が持てず、新しい閃きを受け取り難くもなるんじゃ。記憶全てを失ってしまうことはまた違う状態じゃが、適度に忘れることで人は心身の健康と思考や創造といった面での柔軟性を保てるという訳じゃ」
2026年5月29日号につづく❣


